ごねんぶりにどめの

時代を嘆くなって、言ったじゃないか!

マントを捨てても君はわたしの王子様

 

10月に入ったにも関わらず、日本に過去最強クラスの台風が訪れる季節感の無さ。

そんな中わたしも、真夏に開催されたSummer Paradise 2019(サマパラ)の思い出話をしようとしている。全公演終了した頃に書くつもりだったが、先延ばしにした結果、台風同様季節外れになってしまった。

 

 

その日は第2バルコニーの最前列の席で、うちわもステージから視認できそうな位置だった。普段のコンサートではあまりうちわを振らないが、せっかくなら「あなたを応援している人がここにいるよー!」という気持ちを少しでも伝えられればと思った。

右手に白く光らせたペンライトを常時持ち、左手は通常であればがっしり双眼鏡を持っているところを、移動が多いいわゆるファンサ曲などではグッズのミニうちわに持ち換えてコンサートを見ていた。

 

そしてその時はやってきた。キスマイの『Kis-My-Calling!!』のトラジャ版『TJ Callling!!』の時だった。

曲の最中、ステージ上を移動しながら歌っていた如恵留くんが自分の座席側に近づいてきた。ちょっとでもペンライトとうちわに気づいてくれたらいいなと思いつつ、コール&レスポンスの声を精いっぱい出していた。

すると、如恵留くんがなんだかこちらに気づいた素振りをしたような気がした。

もしや気付いてくれたのではいやいやでもまあ気のせいでもいいやとぐるぐる思考を巡らせて焦ったわたしは、咄嗟に如恵留くんに向かって深々と頭を下げた。

キャーとかワーとか喜んだ声を出すわけでもなく、ペンライトを振り返すわけでもなく、コンサート中に似つかわしくないお辞儀をしてしまったのであった。日頃からの感謝の気持ちがあふれ出てしまったが故の行動だったと後になって思う。

 

そしたらなんと、如恵留くんがこちらに向かって、「いただきます」を言う時のように胸の前で手を合わせたのである。

 

いつもテレビやスマホの画面を通して見ているにこっとはにかんだ笑顔で、「ありがとう」のポーズを取ってくれていた。神様に気づかれたような気分だった。『僕だけのプリンセス』でマントをつけて登場したノエル王子は、マントを外しても王子様のようなまぶしさだった。

 

アイドルに気づいてもらったりファンサをもらったりするためにコンサートに行くわけではないが、『ファンの存在を本人に気づいてもらう』という体験が特別であることは間違いないと実感した瞬間だった。